がんと闘う、がん治療を行う 福岡県北九州市-ひわきクリニック

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ANKがん免疫療法のエビデンス

2018年医事新報より抜粋

1. 南九州の医師が、体内のNK細胞を体外に採りだして培養し、増強してから体内に戻すANK免疫細胞療法の治療経過を学会に発表されたと聞きました。この治療の普及を目的に創業されたリンパ球バンク株式会社代表藤井真則氏にお話をうかがいました。


学会発表された、ということですが。

結構、お問い合わせを頂くのですが、会社として学会発表したのではありません。ANK療法を実施する医療機関と、細胞培養を受託している医療機関の医師の方々が、第18回国際ヒトレトロウイルスHTLV会議(2017年3月7日〜10日、東京)で発表されたものです。

詳しくお話いただけないでしょうか。

 まず、対象疾患の基本的なことを整理させてください。
ANK療法は、がんであれば、特に部位を問いませんが、標準治療が特に苦手とするがん種ほど、多くの患者さんが集まる傾向があります。

 中でも、ATL成人T細胞白血病の場合、標準治療が確立しているとは言えません。抗がん剤投与開始後の平均余命13カ月という、非常に厳しい数字が物語っているように、抗がん剤が奏効しないか、しても直ちに再燃すると言われています。

 今回、学会発表された医師が治療されたATL患者さんのお一人が、急性転化する兆しが表れた時点で、直ちにANK療法を実施する医療機関を受診され、お元気になられ、他の疾病で他界されるまで、6年間、再発もなく過ごされました。

 そこで、これまでの臨床例をまとめてほしいという要望が、患者さんからも根強くあると聞いております。こうした声を受け、医師が、ご自身で経験された9症例について、先ほどの著効の方も含め、経過を発表されたものです。

 私も、その学会に参加し、発表された資料を拝見しましたが、治療途上で、急性化したり、他の原因で亡くなられた方が4人、他の4人はご存命で、治療後3〜7年経過していました。より詳細なことは、今後、先生方が、アカデミアを通じて、発表されていかれるようです。

手応えについてはどう感じていらっしゃいますか。

 印象としては、手応えがありますが、医療の世界では、さまざまなデータのフォーマリティーを整える文化がありますよね。その点、ATLといっても、タイプや進行期が異なり、治療回数や頻度も異なり、と、統計処理には向かないものになっています。

 今後は、患者さんのクライテリアを絞り、治療プロトコールもある程度、標準化して、治験なり、治験をイメージした臨床試験なりを組織していくと、承認申請への道も見えてくると考えております。そうなれば、健康保険で治療を受けられるので、少しでも早くそうしたいところです。

一番のネックは何でしょうか。

 それは一にも二にも、資金調達です。治験に必要な費用は、一般の方が想像されるものより遥かに莫大(ばくだい)なものとなります。日本のベンチャー企業では、大きな資金を投入できないので、工夫が必要、ということです。

 希少疾患における治験の場合、如何(いか)に患者さんをリクルートするかということが大きなネックになりがちですが、これまでの治療人数は他の医療機関さんも含めると、すでに承認申請レベル相当に達しています。

 これは、元気になられた患者さんたちの口コミなどで、患者さんが集まってこられるからで、それだけ、ご期待に応えなければいけない責務もあるということですね。

ところで、免疫細胞療法というのは、一般に白血病は治療できないと聞いていたのですが。

 白血病の場合、培養に用いる細胞を血液から採取した時点で、がん細胞が混入します。培養中に増殖した混入がん細胞を患者さんに戻すのは問題ですので、一般に、免疫細胞療法は、白血病の治療には用いられません。

 ANK療法の場合も、混入がん細胞があまり多いと、培養は無理です。あくまである戦力比以下なら、ということですが、培養中に、ATL細胞などを全滅させることも可能です。こういうことができるのは、活性の高いNK細胞を増強できているからです。


2. ATLに対するANK免疫細胞療法の論文が海外誌に掲載される。
患者体内のNK細胞を体外に採りだして培養し、増強してから体内に戻すANK免疫細胞療法の著効例を報告する論文が、スイス、バーゼルにある電子版学術論文誌MDPI(査読あり)に8月14日付で掲載されました。
この治療の普及を目的に創業されたリンパ球バンク株式会社代表藤井真則氏にお話をうかがいました。

ANK療法に関する査読のある論文が掲載されましたね。

 実際に治療された医師と細胞培養を受託された医師お二人、ご協力を頂いた大学の研究者の方々が症例報告として論文投稿されたものです。

ATLというのは治療が難しいですよね。

 日本血液学会のガイドラインによると最近ではアグレッシブATL(特に進行が早いタイプ)の余命中央値が13カ月、進行が遅いタイプも結局は急性転化し、急性転化後の平均余命中央値が1年、急性転化前には治療は行わないコンセンサスがあるとしています。

どのような治療効果がみられたのでしょうか。

 症状の進退を繰り返す「くすぶり型」と診断された患者さんの病状が急変し、急性期に移行されました。腫瘍マーカーが急激に増加し、異常細胞率(リンパ球に占めるATL細胞の比率)が27%に達していました。

 ANK療法を受けられ腫瘍マーカーが低下して落ち着き、さまざまな皮膚症状も消え、ATLに伴う高血圧や他の異常値も正常範囲に入ったので退院され、ご自宅で日常生活を送られるようになりました。

 ATLではない疾病でお亡くなりになられるまで、治療終了後から数えて5年以上を特に症状もなく過ごされました。急性転化後は他の治療は受けられていません。

昨年の国際学会では他にも長期生存の方々がいらっしゃると発表されていましたが。

 長期生存4名様については今回の論文で他に4例の成功例ありとしていますが、それ以外はどうしても高齢の方が多いので他の疾病等で早くお亡くなりになられたり、症状が進行し過ぎて培養が間に合わなかったり、徹底した抗がん剤投与を受けられた後からANK療法を受けられたために体力等の問題で高熱がでるANK療法を集中的に実施できなかったなどで、残念な結果に終わられる方もいらっしゃいます。

 「急性期に入る前のくすぶり段階で治療を受けられるのが望ましい」と治療された医師はおっしゃっています。

ANK療法は他の種類のがんも治療対象ですが、なぜATLの症例が論文発表されたのですか。

 標準治療が確立していないため社会的要請も強く、またANK療法単独の効果であることを示しやすいということもあります。固形がんと違い血液中にがん細胞がいますので、血液検査だけで随時確定診断ができます。固形がんよりはるかに治療効果を判定するデータを取りやすく明確なエビデンスになりやすいわけです。

逆に培養器に混入したがん細胞が培養によって増えてしまいますよね。

 ATLはリンパ球ががん化したものなので、一般にリンパ球を培養する環境下では急激に増殖します。これを培養中にNK細胞が排除しないと治療に使えないわけですが、培養中にATL細胞が消滅することを確認しています。

保険適用になる見通しはあるのでしょうか。

 未承認医療として自由診療で実施され、固形がんの標準量治療12回の点滴を1クールとしておよそ400万円を超える費用がかかります。ATLの場合は半量点滴が基本で点滴1回当たりの単価はおよそ半額になりますが。

 保険適用になるためには承認申請を行う必要があり、その費用は一般の方どころか臨床現場の医師でも想像できないほど巨額になります。

 私の使命は資金力のある大企業と提携して承認申請をかけてもらうことです。ただし米国で承認を取得した免疫細胞療法の薬価は点滴1回で5千万円、附帯費用がおよそ1億円です。

 原価以上に承認申請費用の回収が大変で、そこに利益を乗せるとこういう値段になってしまいます。承認申請費用を徹底して抑える工夫をしないと保険適用になっても本人負担分が自由診療より高くなってしまいます。

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